AMAZONAS / PARINTINS / FESTIVAL

BAND 04 / 10

Boi-bumbá

牛の物語を、町全体で演じる。

歌、打楽器、踊り、牛の人形、衣装、巨大造形、観客の応援。ボイ・ブンバは一曲のジャンルではなく、アマゾンの歴史と想像力を舞台にする総合的な祭りです。

ボイ・ブンバの巨大造形が登場するパリンチンス祭の会場
舞台、造形、音楽、観客が一体になるパリンチンス祭(2018年)

Clara Angeleas / MinC / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

01ABOUT

WHAT IS BOI-BUMBÁ?

音楽だけでは、ボイ・ブンバにならない。

アマゾナス州のボイ・ブンバは、牛の死と再生をめぐる物語をもとに、地域の暮らし、伝説、環境、先住民を題材にする文化行事です。

パリンチンスでは、青と白のカプリショーゾ、赤と白のガランチードが、トアーダ、打楽器、踊り、衣装、巨大な造形、観客の応援を競います。祭りの中で歌われる楽曲が toada de boi-bumbá です。

祭りは地域の誇りと創造の場である一方、舞台上の「先住民」の表現は芸術的な再構成です。現実の多様な先住民族の儀礼を、そのまま再現したものではありません。

TOADA+RITMO+ESPETÁCULO

RED × BLUE / THREE NIGHTS / 21 ITEMS

赤と青。競うのは、歌だけではない。

パリンチンス祭の中心は、二つのボイが三夜にわたって行う対抗公演です。勝敗は人気投票ではなく、音楽、踊り、登場人物、巨大造形、物語、観客の参加まで含む21項目の審査で決まります。

赤と白の衣装で演じるボイ・ガランチード
赤組・Boi Garantidoの舞台(2016年)

Bianca Paiva / Agência Brasil / CC BY 3.0 BR / Wikimedia Commons

RED SIDE

Boi Garantido

ボイ・ガランチード

赤と白/額のハート/Batucada

Baixa do São Joséを基盤とする「赤組」。白い牛の額に赤いハートを掲げ、打楽器隊をBatucadaと呼びます。

青い衣装と牛の人形で演じるボイ・カプリショーゾ
青組・Boi CaprichosoとSinhazinha

Leandrosnascimento / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

BLUE SIDE

Boi Caprichoso

ボイ・カプリショーゾ

青と白/額の星/Marujada

青と白を掲げる「青組」。黒い牛の額に青い星を置き、打楽器隊をMarujada de Guerraと呼びます。

3NIGHTS

二団体は三夜それぞれに異なる構成の公演を行い、三日間の総合点で優勝を争います。

2–2.5hEACH SHOW

各団体の一夜の持ち時間は2時間以上2時間30分以内。長い物語を音・踊り・造形で展開します。

21JUDGED ITEMS

歌だけでなく、個人役、集団演技、観客、衣装、物語、巨大な舞台造形まで採点対象です。

WHAT DO THEY COMPETE IN?

21項目を、三つの角度から採点する。

現行の審査項目は、次の三つのブロックに分かれます。つまり「良い曲を演奏した方」ではなく、二時間を超える総合舞台を最も高い完成度で成立させた側が勝ちます。

A / COMMON & MUSICAL

音楽と全体運営

司会/トアーダ歌手/Batucada/Marujada/Amo do Boi/トアーダ/観客/全体構成

B / SCENIC & CHOREOGRAPHIC

人物と踊り

旗手/Sinhazinha/Rainha do Folclore/Cunhã-Poranga/Pajé/牛の演技/振付

C / ARTISTIC

物語と造形

先住民儀礼/先住民集団/Tuxauas/地域的人物/巨大造形/アマゾンの伝説/Vaqueirada

02PLACE & MAP

PARINTINS / AMAZONAS / ILHA TUPINAMBARANA

川で結ばれた島の町が、三夜だけ巨大な劇場になる。

パリンチンスはアマゾナス州東部、アマゾン川水系に浮かぶトゥピナンバラナ島の都市です。州都マナウスから直線でも約370km離れ、祭りの時期には船と飛行機で人と資材が集まります。

会場のブンボードロモだけが祭りではありません。年間を通じて、作曲、衣装、彫刻、踊り、打楽器の稽古が町の仕事と日常を動かします。赤いGarantidoと青いCaprichosoの所属は、家族や地区の記憶とも結びつきます。

舞台は森林、川、先住民、カボクロの暮らしを大規模な造形で表します。ただし、競技の『儀礼』は複数の文化を舞台用に再構成したもので、現実の先住民族の儀礼そのものではありません。

  • Bumbódromo三夜の競技が行われる、牛の頭を模した専用会場
  • Baixa do São JoséBoi Garantidoと結びつく町の地区
  • Curral Zeca XibelãoBoi Caprichosoの稽古・行事の拠点
  • Rio Amazonas観客、舞台資材、暮らしを町へ運ぶ交通の大動脈
  • Manaus観客、報道、流通の重要な拠点。ただしパリンチンス祭の発祥地ではありません
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地図 © OpenStreetMap contributors。印は一つの代表地点であり、文化の範囲を一点に限定するものではありません。

03SOUND

LISTEN CLOSER

何を聴けば、
違いが分かる?

二団体は同じ祭りに参加しますが、打楽器隊の名称や演奏の作法、色、物語の見せ方にそれぞれの個性があります。

01TOADA

物語を運ぶ歌

levantador de toadas が旋律を導き、合唱と観客が応えます。歌詞は牛、川、森、地域史、伝説、環境など、その年の舞台を進めます。

02BATUCADA / MARUJADA

二つの打楽器隊

ガランチードは Batucada、カプリショーゾは Marujada de Guerra と呼びます。太鼓、ロカール、パウミーニャなどが大きなうねりをつくります。

03GALERA

観客も作品の一部

客席の galera は歌い、色を掲げ、振り付けをそろえます。音楽は舞台だけで完結せず、会場全体の応答によって成立します。

04HISTORY

ROOTS / PLACES / CHANGE

歴史を、
写真と映像でたどる。

二団体の競争と舞台表現を通して、祭りが大規模な文化行事へ育った流れをたどります。

  1. 複数の文化が、牛の物語で出会う

    アマゾン各地で、先住民、アフロ・ブラジル、北東部からの移民、カトリック祝祭などが交わり、多様な「ボイ」の遊びが育ちました。1859年には旅行家アヴェ=ラルマンがマナウスのブンバを記録していますが、一つの民族や一つの年を発祥とすることはできません。

  2. 二頭のボイと町の記憶

    パリンチンスではガランチードとカプリショーゾが地域の集まりとして育ちました。両団体は1913年創設を掲げますが、初期史には口承と複数の説があるため、年だけで起源を決めつけません。

    赤と白の衣装で演じるボイ・ガランチード
    Boi Garantidoの現代の舞台(2016年)

    Bianca Paiva / Agência Brasil / CC BY 3.0 BR / Wikimedia Commons

  3. 競技祭として組織される

    1965年に地域の若者たちが祭典を開き、翌年から二団体の競技が中心になりました。ここから舞台、審査、観客の応援が年々大きくなります。

    祭りの準備が進むパリンチンスのブンボードロモ
    公演準備中のBumbódromo(2015年)

    Patrícia Fontoura / Agência Brasil / CC BY 3.0 BR / Wikimedia Commons

  4. ブンボードロモが開場する

    街路やテヘイロで育った遊びは、専用会場の巨大な舞台へ広がりました。会場の拡大は、巨大造形、照明、踊り、観客の応援を一体にする現在の形式を後押ししました。

    パリンチンスのブンボードロモの外観
    Bumbódromo(現代の外観)

    Yesydrodriguez / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

  5. トアーダと舞台が全国へ届く

    テレビ放送、観光、大規模な造形、録音されたトアーダによって祭りの知名度が上がりました。ただし、全国に見える二団体の舞台だけが、アマゾナスにあるボイ・ブンバのすべてではありません。

    青い衣装と牛の人形で演じるボイ・カプリショーゾ
    Boi CaprichosoとSinhazinha(現代の舞台)

    Leandrosnascimento / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

  6. 一年を通して作る文化産業へ

    改修されたブンボードロモだけでなく、ガルパォン、アトリエ、クラルで、造形、衣装、作曲、稽古が続きます。三夜の公演は、町の多くの人びとの一年分の仕事と知識によって支えられています。

  7. 文化複合体全体が遺産になる

    11月8日、IPHANは「中部アマゾナスとパリンチンスのボイ・ブンバ文化複合体」を文化遺産として登録しました。保護対象は二頭の競演だけでなく、テヘイロ、街路、アリーナで行われる多様な実践です。

    巨大な舞台装置と観客で埋まるパリンチンス祭
    Festival de Parintins(2018年)

    Clara Angeleas / MinC / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

05PEOPLE

KEY FIGURES / GROUPS

この音を広げた人たち。

名前だけを覚えるのではなく、どの時代・土地・現場で、その音を変えたのかまで紹介します。

01RED / BATUCADA / COMMUNITY

Boi Garantido

ボイ・ガランチード

赤と白、額のハートを掲げるParintinsの主要bumbá。Batucada、歌手levantador、牛、舞踊、儀礼、巨大造形を一つの物語へ編み、Baixa do São Joséを基盤に一年を通じて制作を続けます。

02BLUE / MARUJADA / COMMUNITY

Boi Caprichoso

ボイ・カプリショーゾ

青と白、額の星を掲げる主要bumbá。Marujada de Guerraと大規模な舞台美術で知られ、赤のGarantidoと三夜を競います。競争は曲だけでなく、地区、家族、職人の帰属意識まで動かします。

03GARANTIDO / ORAL HISTORY

Lindolfo Monteverde

リンドルフォ・モンテヴェルデ

Garantidoの創設者として伝えられる人物。São João Batistaへの誓願や自作の牛をめぐる記憶は団体の自己像を形づくりました。ただし創設年・創設譚には複数の証言があり、公式物語と研究上の論争を分けて理解します。

04LEVANTADOR / SINGER

David Assayag

ダヴィ・アサヤグ

Parintinsを代表するlevantador de toadas。強い声量と長いフレーズで観客、打楽器、舞踊を束ね、CaprichosoとGarantidoの双方で歌った経験を持ちます。歌手が祭り全体を前へ動かす役割を理解できる存在です。

05SINGER / PERFORMER / CAPRICHOSO

Arlindo Júnior

アルリンド・ジュニオール

Caprichosoの歌手・舞台人として1980〜90年代以降の大衆化を支えました。歌だけでなく身振りや観客への呼びかけで青組の一体感をつくり、トアーダをParintinsの外へ届けた代表的パフォーマーです。

06COMPOSER / PARINTINS

Chico da Silva

シコ・ダ・シルヴァ

Parintins生まれの作曲家。《Vermelho》をはじめ、祭りの色、川、労働、自然を短いサビと強い旋律へ凝縮しました。トアーダをarenaの応援歌からブラジル各地で歌われるポピュラー音楽へ広げた人物です。

06SONGS

SONGS TO START

まずは、
この曲から。

両団体のトアーダと、祭りの外へ広がった作品を並べました。Carrapichoはボイ・ブンバ文化をポップに広げた例として聴けます。

  1. 01赤組の非公式な讃歌

    Vermelho

    Chico da Silva / Boi Garantido

    Garantidoの色とBaixa do São Joséへの誇りを、誰もが歌えるサビへ凝縮しました。Fafá de Belémの録音などを通じて祭りの外へ広がり、赤組を象徴する歌になりました。

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  2. 02観客を組織する応援歌

    Pura Harmonia

    Emerson Maia / Boi Garantido

    Garantidoの打楽器、二声、踊りが噛み合う「調和」を祝う曲。短い旋律が観客の合唱へ変わり、競技曲としてのトアーダが会場の身体をどう組織するかを聴けます。

    曲を聴く
  3. 03川が道である暮らし

    Saga de um Canoeiro

    Boi Caprichoso

    カヌーを漕ぐcabocloの移動、川の危険、生活の知恵を反復するリズムで描きます。観光的な「自然」ではなく、川が道であり仕事場でもあるAmazonasの地理が聴こえます。

    曲を聴く
  4. 04トアーダ系ポップの国際化

    Tic, Tic, Tac

    Carrapicho

    トアーダ系のリズムをポップ化し、1990年代半ばに欧州を中心に大ヒットしました。祭りそのものの代表曲ではありませんが、牛祭り由来の音が国際市場で別の意味を得た例です。

    曲を聴く
07CONTEXT

BEYOND THE SHORTCUT

一言で決めつけない。

入口の説明だけで文化を単純化しないために、次の点を押さえておきます。

  1. 01

    ボイ・ブンバは音、舞踊、演劇、牛の人形、衣装、造形を含む文化行事です。曲そのものはトアーダと呼ばれます。

  2. 02

    マラニョン州の bumba-meu-boi と関係する牛祭りですが、土地ごとに名称、音、登場人物、演じ方が異なります。

  3. 03

    カプリショーゾとガランチードがアマゾナスに存在するすべてのボイではありません。

  4. 04

    舞台上の先住民表現は芸術的な構成であり、多様な先住民族の現実の儀礼を一つにまとめたものではありません。

AT TUFS BRASIL KENKYUKAI

ブラ研の
Boi-bumbá

ブラ研では、ボイ・ブンバのトアーダを歌、打楽器、バンド、踊りで演奏します。本来の祭り全体を再現するのではなく、曲が持つ物語と会場を巻き込む力を、大学のステージに合う形で伝えています。

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08SOURCES